Power BIはデータ分析や可視化に優れたツールですが、具体的に何ができるのか、どのように活用できるのかがイメージしづらいと感じる方も多いのではないでしょうか。
このツールは製造業界から無形商材を扱う幅広い業界、営業活動から事業戦略まで幅広い用途に適していますが、自社でも役立つのか疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、Power BIの機能や活用例を詳しく解説し、どのようなビジネスシーンで役立つのかを具体的にお伝えします。弊社では、過去にPower BIの導入支援を行っており、実際の事例もご紹介しています。
Power BIが自社の業務にどのように貢献できるのか、最後まで読んでぜひイメージをつかんでください。
Power BIとは?
Power BIは、Microsoftが提供するビジネスインテリジェンス(BI)ツールで、複雑なデータ分析を直感的に行える点が特徴です。視覚化されたレポートの作成や共有が簡単にでき、経営戦略の意思決定をサポートします。
Microsoft 365やTeams、SAPなどメジャーなERPなどとの連携も可能で、幅広い業界で活用されています。特に製造業や小売業など、データドリブン経営を目指す企業にとって有効なツールです。
Power BIの主な機能と特徴は、以下の通りです。
- データの抽出、変換、統合をノンプログラミングで実行
- 視覚化されたレポートの作成
- 作成したレポートの組織内共有
- レポートの定期的な自動更新
- 常に最新のデータを参照可能
これにより、データ活用を効率化し、意思決定をサポート可能です。
Power BIの2つの機能
Power BIは、大きく以下の2つの機能に分けられます。
- データのクレンジング・分析・可視化
- 作成したレポートの共有
データのクレンジング・分析・可視化
Power BIは、複数のデータソースから情報を統合し、データのクレンジング、分析、可視化を効率的に行えるツールです。
データクレンジングとは、不正確または不要な情報をデータセットから削除し、品質を向上させるプロセスです。
このステップでは、主に以下のようなことを行います。
- 重複データの削除
- 欠損データの補完
- 不正確なデータの修正
- 不要な情報のフィルタリング
分析ステップでは、ExcelやCSV、その他のデータソースを統合し、クレンジングを行うことでデータの品質を向上させ、精度の高い分析を行えます。
特にフィルタリング機能を活用することで特定の顧客層や地域ごとのデータを効率的に分析し、リアルタイムで統合された複数のデータセットを基に、データドリブンな意思決定を行うことができます。
可視化する際は、グラフやチャート、インタラクティブなダッシュボードなど、視覚的に分かりやすい形式でデータを可視化し、ビジネスの現状を迅速に理解できるようにします。
作成したレポートの共有
Power BIはブラウザやスマートフォンで即座に可視化を確認するプラットフォームとして機能するため、誰もが習慣的にデータを見て判断するデータドリブンな働き方をサポートします。
他にも、日時や月次で更新されるデータを自動で反映することも可能で、データを扱う手間を最小限にするための機能が搭載されています。
他のMicrosoft製品との違い
Power BIではデータの分析処理やグラフ化・視覚化ができますが、これらの機能は他のMicrosoft製品でも可能です。
このセクションでは、特に似た機能を持つExcelとPower Pointとの違いをご紹介します。
ExcelとPower BIの違い
Excelは数値データの分析やグラフ作成に適した表計算ソフトである一方、Power BIは大規模データの可視化やリアルタイム分析に特化しています。
そのため、特に、以下の3点において大きな違いがあります。
- 大容量データの取り扱い
- 複数のデータソースの取り扱い
- インタラクティブ性
Excelはセルベースのデータ管理を採用しており、扱えるデータ量には限界があります。例えば、Excel 2007以降のバージョンでも上限は1,048,576行×16,384列です。
この点、Power BIはデータをデータベースとして扱うため、数千万行以上の大規模なデータもスムーズに処理できるのが大きな強みです。
加えて、Power BIには複数のデータセットをリアルタイムで更新・分析する機能があり、大量データを元にした迅速な意思決定が可能です。
ExcelはワークシートやCSVファイルを主に扱いますが、Power BIは社内外の様々なデータソースと統合が可能です。
これにより、ERPシステムやクラウドサービス、外部データベースからのデータを集約し、複雑な分析や企業全体のパフォーマンスの可視化が容易に行えます。
Power PointとPower BIの違い
PowerPointはプレゼンテーション用のスライド作成ツールで、Power BIはデータの分析・可視化に特化したツールです。それぞれ異なる目的に最適化されています。
特に、以下の3つの点の違いが挙げられます。
- データの動的更新
- インタラクティブ性
- レポート作成の効率性
PowerPointではスライドに挿入したグラフやデータが自動的に更新されませんが、Power BIはデータソースとリアルタイムで連携し、常に最新のデータを反映します。これにより、プレゼンテーション中でも最新の情報を使った説得力のある発表が可能です。
また、PowerPointはスライドを順番に表示することに特化しており、データが動的に変化する機能はありません。一方、PowerBIはインタラクティブな操作が可能で、フィルタをかけたり、クリックで詳細データを確認でき、リアルタイムで深い分析が行えます。
加えて、PowerPointは視覚的なスライド作成に優れていますが、データの更新や高度な分析には限界があります。一方、Power BIは大規模なデータを簡単に処理し、複数のデータソースを統合した効率的なレポート作成が可能です。
さらに、Power BIで作成したレポートをPowerPointに埋め込むことで、リアルタイムのデータ更新と視覚的なスライドの両方を活かしたプレゼンテーションが実現できます。
Power BI 3つの製品構成
Power BIは、主に以下の3つの機能で構成されています。
- Power BI Desktop:データを活用したレポートの作成
- Power BI Service:作成したレポートの共有
- Power BI Mobile:作成したレポートの閲覧
Power BI Desktop
Power BI Desktopは、データの統合、可視化、レポート作成を行うための無料のデスクトップアプリケーションです。
様々なデータソースに接続し、分散したデータを一元的に管理することで、効率的なデータ分析が可能です。ExcelやCSV、クラウドベースのデータベース、APIなど、複数のデータを統合し、複雑な分析にも対応できます。
このツールの強みは、豊富なグラフやチャートを用いた直感的なデータ可視化にあります。
ドラッグ&ドロップの操作でビジュアルを簡単に作成でき、ユーザーはデータを視覚的に把握しやすくなります。さらに、複数のビジュアルを組み合わせてレポートやダッシュボードを作成でき、データのインサイトを深く掘り下げることが可能です。
作成したレポートは、Power BIサービスにアップロードすることでリアルタイムで更新され、他のユーザーと簡単に共有できます。これにより、チーム全体で迅速なデータに基づいた意思決定が可能となり、スムーズなコラボレーションを実現できます。
Power BI Service
Power BI Serviceは、クラウドベースのアナリティクスプラットフォームで、作成したレポートやダッシュボードをオンラインで共有するためのツールです。
このサービスを利用することで、組織内のメンバーがリアルタイムで最新のデータにアクセスでき、データに基づく意思決定を支援します。ブラウザを通じて、どこからでも簡単にアクセスできるため、リモートワークやグローバルチームにも最適です。
また、Power BI Serviceでは、Power BI Desktopで作成したレポートをそのまま公開・共有でき、独自のダッシュボードも作成可能です。
ダッシュボードは異なるレポートのビジュアルをまとめて表示でき、複数のデータセットを一画面で比較できるため、分析効率が向上します。
さらに、ダッシュボード内のタイルをクリックすることで詳細なレポートにアクセスでき、さらに深い分析も容易に行えるため、総じて、リアルタイムでビジネスの状況を把握し、データに基づいた迅速な意思決定が可能です。
Power BI Mobile
Power BI Mobileは、Power BIのモバイルアプリで、スマートフォンやタブレットからでも簡単にレポートやダッシュボードにアクセスできるツールです。
これにより、外出先や移動中でもリアルタイムでビジネスデータを確認し、迅速な意思決定が可能となります。データに基づいた対応を、どこからでもスムーズに行えるのが大きな利点です。
このアプリは、Power BI Desktopで作成されたレポートやダッシュボードを表示するビューアとして機能し、ブラウザと同様に操作できますが、アプリ特有の機能も備わっています。
例えば、お気に入りのダッシュボードはオフラインで閲覧可能で、重要なデータ変動時にはアラートで通知を受け取れます。また、PowerBI MobileはiOSやAndroidに対応しており、どのデバイスでも快適に利用できる点が特徴です。
外出中でもパソコンを開かずにスマートフォンやタブレットから簡単にデータを確認・分析できるため、モバイルワークを行うビジネスパーソンにとって非常に便利なツールです。
ここまで、Power BIとは何か、どんな製品構成になっているかをご紹介しました。
次のセクションからは、Power BIの具体的な活用事例をご紹介します。弊社が実際に支援した事例をご紹介しているので、ぜひ読み進めてください。
テクトラジャパンが支援したPower BIの活用例
Power BIはすでに様々な企業で活用されており、弊社テクトラジャパンでも、様々なBI活用の支援を行っています。
このセクションでは、特に代表的な以下の3つの活用事例をご紹介します。
- 【製造業】既存顧客のフォロー
- 【食品製造・小売業】潜在顧客の可視化と顧客喪失の防止
- 【美容製品の小売業】店舗の業績分析結果の可視化
【製造業】既存顧客のフォロー
製造業の企業では、既存顧客のフォローにおいて、データの不整合が原因で顧客対応が滞るという課題が発生していました。
特に、各国の文化やビジネス慣習の違いによって、レポートの数値が一致しないという問題が深刻化していました。
これまでの課題は、データソースが誤って生成されていたことと、レポートが一貫していなかった点です。これにより、各国で異なる顧客フォローの戦略が立てにくくなり、全体的な顧客満足度にも悪影響を与えていました。
テクトラジャパンでは、Power BIを活用してデータソースを統合し、Azure Synapse Dedicated SQL Poolでデータを抽出・構造化した上で、タブラーモデルを使用してビジネスユーザーが自ら操作できるレポート作成環境を整えました。
また、顧客フォローに必要なデータを一貫して分析できる環境作りを支援し、全社的に統一されたデータを基に、顧客対応の改善に貢献しました。
最終的には、顧客フォローの効率が大幅に向上し、各国でのレポートのズレが解消され、顧客満足度の向上に繋がっています。
【食品製造・小売業】潜在顧客の可視化と顧客喪失の防止
食品製造・小売業では、膨大なデータを保有しているにもかかわらず、経営陣が必要な情報を迅速に引き出せず、各店舗や従業員のパフォーマンスを把握できていませんでした。
このため、顧客のニーズに適切に応えられず、顧客喪失が進行していました。
主な課題は、データが十分に活用されておらず、経営の意思決定や顧客分析に役立っていないことでした。その結果、潜在顧客の見逃しや既存顧客の離脱が課題として浮き彫りになっていました。
テクトラジャパンは、Dynamics CRMやERP、POSシステムからデータを抽出し、Azure SQLに格納して、PowerBIを活用した顧客データの可視化と分析をサポートし、これにより、店舗ごとの売上や会員ランク別のパフォーマンス、製品カテゴリーごとの動向をリアルタイムで把握できる仕組みを実現しています。
さらに、顧客喪失予測モデルを使って、リスクの高い顧客に対して事前に対策を講じるサポートも行いました。
最終的に、顧客の潜在ニーズを把握し、喪失防止策をタイムリーに実施することで、売上が改善し、顧客満足度の向上にも繋がりました。
【美容製品の小売業】店舗の業績分析結果の可視化
美容製品の小売業において、店舗ごとの業績を正確に分析できないという問題が発生していました。データが不統一であり、複雑なデータベース構造のため、レポート作成やデータ活用が困難な状況でした。
特に、データクレンジングの必要性が高く、現場での迅速な意思決定に対応できないという課題がありました。データが整理されておらず、各店舗のパフォーマンスを一貫して把握するのが難しかったのです。
これに対し、テクトラジャパンはDynamics AXのテーブルをAzure Synapse Dedicated SQL Poolに抽出し、PowerBIで店舗の業績やコスト分析、販売データを可視化するレポートの作成を支援しました。
これにより、複雑なデータも簡単に分析でき、経営陣はリアルタイムで業績把握を可能にしています。さらに、データクレンジングと統合を通じて、現場での迅速なデータ活用を実現しました。
その結果、店舗ごとのパフォーマンスを明確に把握できるようになり、経営の意思決定がスムーズに進み、業績向上に大きく貢献しました。
Power BIを使いこなす3つのポイント
Power BIは、ただ導入すればすぐに成果を出せるというわけではありません。以下でご紹介する、3つのポイントを押さえておくことをおすすめします。
- 導入目的を明確にする
- 分析に必要なデータがあることを確認する
- 効果測定を行う
導入目的を明確にする
Power BIを効果的に活用するためには、導入目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧だと、データの収集や分析が有効に機能しないからです。
まずは現状の課題を洗い出し、Power BIを通じて解決したい問題や達成したい目標を具体的に設定しましょう。これにより、データの活用方針が明確になり、最大限の効果を引き出せます。
分析に必要なデータがあることを確認する
Power BIを活用するには、必要なデータが適切に揃っているかを確認することが重要です。データが不足していると、正確な分析ができないためです。
分析を行うためには、顧客管理データや売上データなど、目的に応じた十分なデータが必要です。活用する際は、これらのデータが適切に収集されているかを確認し、Power BIで利用できる形式かどうかを把握しておくことが大切です。
効果測定を行う
Power BIを導入した後は、効果測定を行い、変化や改善点を把握することが重要です。これにより、導入の成功を確認でき、改善の余地を見つけるためです。
効果測定を行うことで、業務効率や生産性の向上、意思決定の精度向上などの成果を確認できます。まずは導入前後のデータを比較し、改善点があれば適切な対応を行い、運用方法を最適化しましょう。
まずは、テクトラジャパンにご相談ください
Power BIは、データの分析や可視化を通じて、業務効率の向上や意思決定のサポートに欠かせないツールです。
導入目的を明確にし、必要なデータを確認した上で効果測定を行うことで、ビジネスにおけるデータドリブンな戦略を最大限に活用できます。
テクトラジャパンでは、AI・BIの導入経験があるスタッフを中心に、貴社でのPower BIの活用支援が可能です。
もしPower BIの活用に少しでもご興味がある方は、ぜひテクトラジャパンにご相談ください。専門的なサポートを通じて、貴社に最適なソリューションを提案いたします。
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