クラスタリングと分類、AI分析で最初に混乱する「2つの違い」

ChatGPTやCopilotなど、生成AIを試して「業務にも使えるかも」と感じた方は多いでしょう。
資料作成などの業務支援ではすぐに効果が見え始めています。

一方で、AI分析に踏み込もうとすると、こんな疑問が立ちはだかります。

  • 「分類とクラスタリングって、何が違うの?」
  • 「どちらをどう使えばいいのか分からない…」

実はこの違いがわかるだけで、AIを活かす道筋が見えてくるのです。

この記事では、分類とクラスタリングの基本的な違いと、
実務でどう使い分ければ業務改善に直結するのかを、具体例とともに解説します。

そもそも「分類」って何?「クラスタリング」って何?

AI分析の世界に足を踏み入れると、まず最初に出てくるのがこの2つの言葉──分類とクラスタリング。
どちらも「データをグループに分ける」手法のように見えますが、実は考え方の前提がまったく違うものです。

分類(=教師あり学習)

分類とは、あらかじめ正解ラベルがある状態で、データをそのラベルに当てはめていくことです。

例えば以下のようなイメージ:

  • 「このレビューはポジティブかネガティブか」
  • 「この問い合わせは返品か製品不良か」
  • 「この文章はスポーツ記事か政治記事か」

つまり、「すでに決められたルールに従って、データを仕分ける」分析です。

クラスタリング(=教師なし学習)

一方、クラスタリングは正解が決まっていない状態で、「データ同士の似た傾向」をもとに自動でグループ分けを行う手法です。

  • 「このグループは“価格に関するコメント”が多い」
  • 「このグループは“配送の遅延に対する不満”が多い」

といったように、似た傾向をもつデータを発見し、それに意味づけしていくプロセスです。

わかりやすいたとえ話:カスタマー対応の「仕分け」と「傾向探し」

分類 → 「仕分けルールが決まっている問い合わせ振り分け」

カスタマーサポートで、問い合わせを受けたときにこういう仕分けをすることがあります:

  • 返品対応 → Aチーム
  • 操作方法の質問 → Bチーム
  • 製品不良 → Cチーム

これは、「事前に決められたカテゴリ(ラベル)」に従って、対応を分ける作業です。
新しい問い合わせが来たときも、ルールに従って自動で「これは返品対応ですね」と仕分けされます。

クラスタリング → 「なんか似た内容の問い合わせが増えてない?」

一方で、こういう気づきもあるかもしれません:

  • 「最近“電源が入らない”って問い合わせが増えてるような…?」
  • 「“アプリが重い”という声が、SNSでもよく見かける…」

こういった気づきは、あらかじめラベルがあるわけではなく、似た内容を“発見する”作業です。
クラスタリングは、こうした「潜在的に増えている傾向」を自動でグループにまとめ、見える化するのに役立ちます。

実務での違いと活用シーン

「分類とクラスタリング、考え方はわかったけど、実際にどんなときに使うの?」

そんな疑問に答えるために、まずは活用シーンの違いを整理してみましょう。

実務での使いどころ比較

分類(ラベルあり)クラスタリング(ラベルなし)
商品レビュー分析ポジティブ / ネガティブに自動分類類似した意見で自然にグループ化(価格/味/対応など)
問い合わせ対応「返品」「製品不良」「使い方」などに自動仕分けよくある相談内容を傾向別に抽出(未定義のカテゴリを発見)
クレーム管理過去のクレーム種別から新しいクレームを自動分類潜在的な不満傾向を発見(気づかれていないトピックを明確化)
顧客分類「優良顧客」「離反リスク高」などを分類してアクション顧客の行動・属性から自然発生的にセグメントを抽出

実務では「クラスタリング→分類」の流れが効果的

特に実務で多いのが、

「そもそもどう分類していいかわからない」

というケース。そんなときは、まずクラスタリングで自然な傾向を見つけるのが有効です。

実践ステップの例

クラスタリングで探索する

 → 似た内容の問い合わせやレビューをグルーピング
 → 「配送に関する声が多い」「アプリの使い勝手に不満が集中」などが見える

発見したグループにラベルをつける

 → 「これは“配送不満”、これは“UI改善要望”」など

分類モデルを作って自動仕分けに活用

 → 次からは新しいコメントも自動で振り分けられるようにする(省力化&可視化)

このように、クラスタリングは探索フェーズで、分類は実装・運用フェーズで力を発揮します。
次のセクションでは、こうした考え方がカスタマー分析や業務改善にどう役立つかを具体例で見ていきましょう。

実務でこう使える:カスタマー分析・業務改善の例

分類とクラスタリングの違いがわかってくると、
「これ、うちの業務にも使えるかも?」と感じる場面が増えてきます。

例えば、こんな疑問を感じたことはありませんか?

  • 「コールセンターの履歴、もっと簡単に整理できないかな?」
  • 「お客様アンケート、たくさんあるけど結局どんな意見が多いの?」
    「営業コメントの傾向を掴みたいけど、全部読むのは現実的じゃない…」

こうした声にこたえるのが、クラスタリング+分類の組み合わせです。

ケース①:コールセンター対応履歴の整理

  • 大量の通話記録や対応メモをクラスタリング
  • 「接客の態度」「商品の使い方」「在庫切れ」などのグループが浮かび上がる
  • 分類モデルを作って、今後の問い合わせを自動で仕分け

→ 現場の対応が早くなる+集計も一瞬で可能に

ケース②:アンケート・口コミの傾向把握

  • フリーテキストのアンケートをクラスタリング
  • 思ってもみなかった不満や改善要望が可視化される
  • 抽出された内容から、次回の設問設計やCS改善に活用

→ 現場の声を見逃さず、戦略につなげられる

ケース③:営業日報・顧客コメントの分析

  • 営業が書き溜めた日報や活動記録をクラスタリング
  • 顧客の関心テーマごとに分類(価格重視・競合比較・導入障壁など)
  • 次の提案時に“関心別テンプレート”として再活用

→ ナレッジの属人化を防ぎ、営業活動の再現性がアップ

ポイントは「分類の“種”をクラスタリングで見つける」

実務では「ラベル付きデータ」がそもそも存在しないケースが多いため、
まずはクラスタリングで傾向を探り、そこから分類ルールをつくるのが王道です。

まとめ

AIを活用したいけれど、何から始めればいいかわからない──
そんなときはまず、「データをどう分けるか?」という視点から始めてみましょう

分類とクラスタリングは、どちらも“分ける”手法ですが、

  1. 分類は「ルールがあるとき」
  2. クラスタリングは「ルールがまだ見えていないとき」

に使い分けるのがポイントです。

実務では、まずクラスタリングで傾向を探り、
そこから分類モデルを作って運用する、という流れが効果的。

生成AIだけでは見えづらい“データの活かし方”を学ぶことで、
AI分析の一歩目に自信が持てるはずです。

Index